浮気の定理-Answer-
そんな会話をしながらふとテレビ台のすみに目をやると、ブルーの袋が見えて思わず手に取った。



「あれ?これ借りてきたんだ」



以前ありさが働いていたレンタルショップのDVD。


パートを辞めてから疎遠になっていたその店の袋を見て、胸がざわついた。


あいつに会ったんだろうか?


そんな不安がよぎる。


自分ではうまくやっているつもりでも、ありさはそうじゃないのかもしれないと、途端に自信を失っていく。




「そうなの、すっごい久しぶりに借りてきちゃった。あの子達がどうしてもって言うもんだから」




ありさの様子に動揺は見られない。


きっと本当に娘達にせがまれて仕方なく借りに行ったんだろう。



「そうか、まだありさが働いてた頃の人たちっていた?」



我ながら女々しいとは思いながらも、聞かずにはいられない。


それでもありさはいつもと同じ様子でコーヒーをいれながら「うん、いたいた」と笑いながら答えた。



「菊池さんていたでしょ?古株のパートさん。すっかりボスみたいになってた」



思い出したようにクスクス笑いながら、ありさは話し続ける。



「あ、でも新しい女の子も入ってたな。若い子だったからまた菊池さんになんか言われてないといいけどね?」





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