浮気の定理-Answer-
もとはといえば、誘ってきたのは真由の方だ。


俺を誘惑し、俺の心を乱しときながら、自分はさっさと若い男に乗り換えるなんて……


あんな風に誘われなければ、俺はそれまでと変わらずに、家庭を一番に考えるいい夫であり、いい父親だったはず。


それを崩したのは、他でもない真由なのだ。


だから罪悪感はなかった。


残された選択肢を確実に自分のものにするためなら、俺はなんだって出来る。


――もう危ない橋なんか渡るもんか……


以前のような平穏で安心できる生活を取り戻すために、俺はこの瞬間、真由への思いを捨てた。


どちらにしても、真由が自分に戻ることはないだろう。


だったら、全てを失う前に、妻に許しを乞うしかない。


「浮気したことは悪かったと思ってる

ただ、誘ってきたのは向こうで、俺は何度も断ったんだ

だけど一度だけでいいって言われて、それで諦めてくれるならって……

すまない……」


一度そう思ったら、スラスラと言い訳が出てくる。


あとは妻が信じてくれるかどうか、それにかかっていた。
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