浮気の定理－Answer－
テーブルに置いた携帯が再び震えると、遠慮がちに手に取りながら相手の名前を確認する。


さっきとは微妙に違う、それでも嫌ではなさそうな表情でそっと携帯を耳に当てた。




「もしもし……あぁ、もうすぐ帰るよ、うん、じゃあ……」



思ったよりもすぐに切れた電話からの相手を想像してみる。


浮気をするようなタイプには見えないし、さっきの会話からも別れたんだろう元妻と子供のことをとても大切にしている様子だった。


一緒に住む相手は他の女という可能性は低い気がして、頭をひねる。


もしかしたら、離婚したのをきっかけに実家に戻ったのかもしれない。


それならば電話の相手は母親ということになる。


妙に納得しながら、目の前の客の裏側が気になって想像している自分に苦笑した。


どういう経緯で別れたのかは知らないけれど、今の彼の顔を見ていると、後悔と反省とそして諦めが感じ取れる。


それでも前向きに、自分に出来ることをやろうとしている雰囲気に少しだけ彼を応援したくなった。


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