浮気の定理－Answer－
母に抱きしめられたまま、グルグルとそんなことが頭の中を支配する。


それでも母はさらに抱きしめる腕に力を込めて、根気強く俺を説得した。




「暴力では何も解決しないの。そのときは従ったように見えても、それは暴力から逃れたいからであって本当の意味で納得してるわけじゃない。涼子さんだって最初は勇のことちゃんと愛してたと思う。だけど、加速する暴力が花ちゃんに向かうかもしれないって思った時、彼女は妻であることよりも母親であることを選んだのよ。自分だけなら我慢出来ていたことが出来なくなったんだと思う」




俺が花を殴ろうとするわけないのに、なぜそれがわからない？


それほど俺は信用をなくしていたってことなのか？




「そういう意味ではお母さんよりも涼子さんの方が母親として立派なんだと思う。お母さんは勇に甘えてた。あんたを守るどころか何度も八つ当たりしてた……」



ごめんね？そう囁きながら、そっと俺の髪を撫でる。



「そのせいで勇は人の愛し方がわからなかったんだと思う。だから、涼子さんへの愛情も歪んだものになっちゃったの。それもこれも全部お母さんのせい……だから、これからゆっくりでいいからちょっとずつお母さんとやり直そう？涼子さんと花ちゃんのことは遠くから見守ってあげようよ、ね？」
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