浮気の定理-Answer-
それから俺と母の奇妙な同居が始まった。


俺はちっとも納得なんかしてなかったし、何度も追い出そうとしたけど、母は頑として俺の家に居座り続けた。


そして宣言通り、毎日明かりをつけて待っている。


子供の頃には作らなかったような料理を並べて、「おかえり」って少し照れたような遠慮がちな笑顔を浮かべて。


そんなことが2週間、1ヶ月と続くとだんだんそれが当たり前のようになってきて、半年たった今ではすっかり俺の気持ちもおさまっていた。


涼子との離婚も絶対に承諾したくないと突っぱねていたけれど、一度離れてお互い距離を置いてみたら?と母に何度も諭されているうちに、その方がいいのかもしれないと思うようになっていった。


でもやっぱり一番悔しいのは、花の成長を近くで見れないことだ。


だからクリスマスと誕生日には会わせてほしいと、それだけを条件にして、俺は離婚に応じた。


養育費はいらないと突っぱねられたけれど、それだけは払わせてほしいと願い出た。


いくら別れたとしても花は俺の娘なのだ。


何かしてやりたい気持ちは変わらない。


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