浮気の定理-Answer-
何があってもそばにいるから。


どんな勇でもちゃんと受け止めるから。


何度も何度も俺に言い続ける母自身もきっと、自分がしてきたことへの後悔と償いのつもりなのだろう。


幼い頃の記憶は消せないけれど、やり直しはいくつになっても出来るものなんだと、母に教えられた。


母にとっても俺にとっても、昔の記憶は悪夢のようなもので、だから今ごっこのような毎日を送っていても、気恥ずかしさはあっても嫌な気持ちにはならない。


俺がしてきた涼子への仕打ちが、唯一愛情の表現だと無意識に刷り込まれていたことを、必死に溶かそうとしてくれている。


頑なだった俺の心は少しづつほぐれていき、母との生活が当たり前になってきた頃、気づけばまだまだだと思っていた花の誕生日が近づいてきていた。


離婚して初めて花に会える大切な日だ。


もちろん、涼子も一緒という条件ではあったけれど、俺としてはそちらの方がありがたかった。


花に会いたいのはもちろんだけれど、涼子にも一目会いたかったから。
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