浮気の定理-Answer-
「やったぁ!ママ、パパがいいって!」
嬉しそうに俺の首に腕を巻き付けて、ぎゅっとしがみついてくる。
この感触を重みを匂いを覚えていたかった。
次に会う時にはきっともっと大きくなって、もしかしたら抱っこなんてさせてくれないかもしれない。
「あなたがいいなら……」
以前の俺なら、歩きなさいとたしなめていたのかもしれない。
涼子も昔の俺を想定して、俺に叱られる前に花を降ろそうとしたんだろう。
「ほんとに勇さん、変わったね?」
そう言ってから、遠慮がちにまた口を開く。
「お母さんの……影響、なのかな?」
言ってしまってからハッとしたように涼子が口をつぐむ。
余計なことを言って怒らせたらという思いが見て取れた。
それだけ俺は涼子に対してひどい仕打ちをしてきたんだと、改めて認識させられる。
「そうかもしれないな?おふくろのおかげでいろいろと変われたのかもしれない」
だから素直に、そう答えた。