浮気の定理-Answer-
そこまでは嘘じゃない。


そのあと、俺自身が真由にはまってしまったなどとは、間違っても言うつもりはなかった。


「……わかったわ」


真っ赤に腫らした目で、妻は俺を真っ直ぐに見つめながら、そう言った。


「私が行ってくる」


「えっ?」


「私が、吉岡さんに会ってくる」


分かってくれたんだと、ホッとしたのも束の間、妻はとんでもないことを言い出した。


「会うって……何しに?」


「そんな娘に育てたのは、吉岡さんの責任でもあるでしょ?

娘が別れないって言ってるなら、こっちは父親に別れるように言ってもらいましょう?

あなたは、先輩なわけだし、言いづらいのはわかる……

だから、私が会って、吉岡さんにきちんと話してくるわ

脅されて……関係をもってしまったけど、別れて欲しいんだって……ちゃんとお願いしてくる」


俺の話は全面的に信用されたらしい。


それはとても喜ばしいことだった。


けれど妻の提案は、俺を動揺させた。


先輩に恥をかかせることになる。


本来なら、俺の方が先輩に殴られたっていいくらいのことをしているのにだ。
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