浮気の定理－Answer－
グラスを磨きながら、しばらく彼らの話に耳を傾けていると、どうやら既婚者の方には女がいるらしい。


離婚したいが、慰謝料は払いたくない。


そんな理由で、妻の方に不貞があったんだと思わせるために、この独身男をそそのかしているみたいだ。


独身男の方は、まんざらでもない様子で、話を聞いている。


その妻とは面識があり、しかも秘かに好意を抱いてたらしい。


――そういうことか……


それを知った上で持ちかけた話なんだと気づいて、気分が悪くなる。


最低だ。


この旦那も、この男も。


最後に手渡された薬のようなもの。


眠らせて襲う計画なんだろう。


警察に知らせた方がいいだろうか？


けれど、こいつらがどこの誰なのか、まったく検討もつかない。


せめて陥れられる女性に知らせることが出来たら……


自分の無力さを呪いながら、俺はただ、彼女の無事を祈ることしか出来なかった。

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