浮気の定理-Answer-
なんの話かは知らないが、あの木下の旦那が俺に話があるなんて、面白いかもしれない。


しかも俺にとって悪い話じゃないというなら、なおさらだ。


「わかりました、付き合いますよ」


彼の申し出を快諾し、俺たちは場所を変えることにした。


たまに行く、銀座にあるBAR。


カウンター席の端を陣取り、注文した水割りを一口飲んだあと、彼がおもむろに話を切り出した。


「水落さんは、桃子をどう思います?」


「はっ?ど、どうって……」


いきなりの質問に俺はしどろもどろになる。


木下桃子は同期入社で、当時から目立つ存在だった。


容姿はもちろんのこと、仕事も出来たし、性格もさばさばしていて好感がもてたからかもしれない。


圧倒的に男の多い職場で、木下は甘えることも媚びることもせず、堂々と男性社員と渡り合える女だった。


だから俺も惹かれたのだ。


少なからず恋心を抱いていたことは、否定できない。


同期同士でよく飲みに行ったときも、ほとんどの男性社員が狙っていたことだろう。


そんな中、急に決まった結婚は寝耳に水だった。
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