浮気の定理-Answer-
「あなたのご意見をお聞かせ願えないでしょうか?

桃子に好意を抱いてませんか?」


ぬけぬけとよくそんなことが聞けるもんだ。


それとも――


本当は俺を牽制しに来たのか?


木下に頼まれて、自分に好意を寄せるしつこい同期の男を排除するために現れたんだとしたら?


もしそうなら辻褄が合う気がした。


油断させるために、俺にとって悪い話じゃないと言ったとしても、おかしくはない。


途端に手のひらが汗でぐっしょりと湿ってきた。


心臓の音が隣に聞こえるんじゃないかと思うほど、激しく鳴っている。


――よく考えてみろ!俺は何かしたわけじゃない!


確かに木下を自分のものに出来たらと思ったことはあるけれど、行動に移したわけじゃない。


頭の中で何度も犯したことはあっても、実際には仕事以外で話をすることもなくなっていた。


飲み会で隣の席に座ったとしても、目を合わせることすらない。


俺はただ、舐めるように彼女を眺めることしか出来ないでいた。


それが罪になるのか?


密かな思いを咎められるほど、悪いことをした覚えはない。

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