浮気の定理-Answer-
「だったらなんだって言うんですか?

確かに交際を申し込んだことはありましたけど、俺はそのとききちんとフラれてますし、結婚してる女をいつまでも引きずるほど暇じゃありませんから」


一気にそう言い切ると、グラスを乱暴に掴み、酒をあおる。


そうでもしなければ嘘がバレてしまうような気がしたからだ。


いまだに隙あらばと狙っていたなんて、正直に話す必要はない。


もし、木下から手を引けという話だとしたら、余計にだ。


「さっきも言いましたが、あなたを責めるために誘った訳じゃありません

もし、まだ桃子に気持ちが少しでもあるなら、あなたの好きにしてもいいですよとお伝えしたかっただけですから」


……。


――えっ?今……なんて?


驚きを隠せない俺とは対称的に、この男はいたって真面目で、しかもなんの感情も伝わってこないような涼しい顔で俺を見る。


冗談ではない雰囲気が、彼を纏っていた。


「好きにしていいって……木下を……ですか?」


確認するようにそう問えば、男は黙ったまま頷いた。

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