浮気の定理-Answer-
そう言って、男はポケットから小さい紙包みを俺の前に置いた。


「……これは?」


なんとなく中身は想像できたけど、敢えてそう聞いてみる。


「睡眠薬です

水に溶けやすい粉のものですから、使いやすいと思います

わりと効きやすいので、朝までバッチリ眠ってると思いますよ?」


――やっぱりそうか……


そこまでして仮にも自分の妻だった女を陥れるなんて、信じられなかった。


この計画に乗るのも降りるのも俺次第だ。


だけど、俺がもし断ったとしても、他のヤツにまたこの話を持ちかけるんだろう。


この男ならやりかねない。


だったら、他のヤツがいい思いをするくらいなら、自分のものにしてしまおうか?


俺の中の善と悪の感情は、今まさに戦っていた。
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