浮気の定理-Answer-
一度だけだと思っていた食事の約束は、二度になり三度になっていった。


その頃も俺は先輩の大事な娘さんに接待している感覚で、楽しくはあったけれど、線引きはきちんと出来ていたような気がする。


彼女は連れていく先々のお店で感嘆の声をあげ、さすがですねぇと呟いた。


このくらいの年齢になれば、いろんな店を知っているんだと思ってくれたのだろう。


実際は若い女の子の好きそうなお店を必死にリサーチしていたというのに……


その中でも、敢えて高い店を選び、彼女の喜ぶ顔が見たくなっていったのは言うまでもない。


いつものようにごちそうさまと、後をちょこちょこ着いてきていた彼女が、店を出てすぐの路地に俺を引っ張りこんだのは懐石料理を食べた後だったか……
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