浮気の定理-Answer-
少し考えるようなそぶりを見せた俺に、男は不満そうな顔を見せた。


きっと、俺がすぐに飛び付くとでも思ったんだろう。


確かに、木下のことは好きだ。


好きにしていいと言われれば、正直喉から手が出るほど欲しい。


だが、いいのか?


このままこの男の口車に乗ってしまっても……


なかなか決心がつかずに、俺は目の前の酒を一気に飲み干した。


「なにか……悩んでらっしゃるんですか?」


男は焦ったように、俺にそう聞いてくる。


俺は、何も答えなかった。


すると男は大きく溜め息をついて、それからまたさっきのような笑みを浮かべる。


「何を戸惑うことがあるんですか?

こう言っちゃなんですが、体だけなら彼女は最高ですよ?」


「……」


「わかりました

では、こうしましょう

桃子を眠らせて、することをしてくれれば、30万払います」


「え……?」


「水落さん、借金があるんですよね?

少ない額でも返済が遅れれば、利息が膨らむんじゃないんですか?」


「調べたのか……」


確かに、俺はギャンブルに金をつぎこんで、サラ金から金を借りた。

< 50 / 350 >

この作品をシェア

pagetop