浮気の定理-Answer-
――山本があの位置か……


木下が別の方に気をとられていればチャンスだと思ったけれど、山本からは丸見えだ。


なんとかチャンスを作らなければ……


盛り上がりを見せているみんなとは裏腹に、俺は一人だけ焦りを感じていた。


このままじゃ、計画を実行に移すことが出来ないかもしれない。


今、隣に座る木下のグラスに手を出せば、明らかにおかしいと思われるだろう。


チラリともう一度、山本に目をやれば、やはりこちらを向いている。


こちらといっても、俺を見ている訳じゃない。


隣の木下を見ているのだ。


こうして冷静に見ていても、山本が木下に気があることは一目瞭然だろう。


そのくせ仲のいい同期を装って、いつも木下を家まで送るのはこの男の役目だった。


――今日はそうはさせるもんか……


ジッと睨むように山本を見ていると、俺の視線に気づいたのか、ふいに山本がこちらを見た。


俺は慌てて目を逸らす。


何か言われやしないかドキドキしたけれど、もう一度様子を窺った時にはもう、山本は別の誰かと話をしていた。
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