浮気の定理-Answer-
「いつもお前ばっかり送ってるから、社内で噂になってるぞ

たまには違うヤツが送れば、怪しまれないだろう?」


山本にそっとそう耳打ちすると、驚いたように絶句した。


そんな噂、俺が今作ったに決まっているのに、山本は自分が木下に疚しい気持ちがあるからか、信じたらしい。


「な?他のヤツも送るとこ見せれば、噂なんかすぐ消えるって」


「……でも、やっぱり」


なかなか首を縦に振らない山本に苛立ちを覚えながら、俺もしつこく食い下がる。


「お前、知らないだろうけど、部長の耳にも入ってんだぞ?

こないだ二人の関係について聞かれたんだ

違うと思うって答えといてやったけど、お前が疑わしい行動を止めないんじゃ意味ないだろう?」


さも、山本のためだとでもいうように、俺は必死に説得した。


しばらく考えていた山本は、諦めたように小さく息を吐く。


「わかった……じゃあ……頼むよ」


「あぁ、心配すんな

ちゃんと送り届けるから」


そう言って、山本が抱いていた肩を、俺の方に引き寄せる。


途端に山本は嫌な顔を見せたけれど、さっきの説得が効いたのか、大人しく木下を引き渡した。

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