浮気の定理-Answer-
人気のない路地で、彼女は俺の首に両手を回して引き寄せた。


なんの警戒もしていなかった俺は、まんまと彼女に口づけられ、うろたえたのを覚えてる。


「何してるの!真由ちゃん!」


慌てて肩を掴み、グイッと引き離した時の彼女の顔は、紛れもなく女そのものだった。


さっきまで俺に触れていた柔らかな唇からは、信じられないような言葉が放たれる。


「私……北川さんのこと、好きになっちゃったみたい……」


衝撃だった。


今までだってモテないわけじゃなかったけれど、こんなに若くて娘ほども歳が離れた女性に告白されたのは初めてだ。


理性は働いていた、と思う。


必死に、ダメだよとか、ごめんとか、彼女に言い聞かせていたような気がする。


それなのに……


彼女が俯き泣いてるように見えた瞬間、俺の理性のタガは外れた。
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