浮気の定理-Answer-
二間続きの部屋の奥。


一旦、俺は玄関に近い台所へと向かう。


冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと、一気に半分ほど飲み干した。


「ふぅ……」


酒はあまり飲んでいない。


だから酔っぱらってるわけじゃない。


それでも、喉はカラカラだった。


気がつくと尋常じゃないくらいの汗が出ていた。


チラリと奥の様子を窺う。


――大丈夫、起きる気配はない……


俺はシャワーを浴びることにした。


さっぱりしてから行動に移したいと思ったからだ。


意識はないとはいえ、汗臭い体で木下に触れることは失礼な気がした。


それほど、俺にとって木下は神聖な存在であり、本来ならあの旦那は憎むべき対象になるのだろう。


今さらながらに、木下が気の毒に思えた。


体を拭きながら下着一枚の姿で、木下の眠る奥の部屋へと向かう。


横たわる彼女の、艶かしい体。


俺の煎餅布団が申し訳ないほど完璧な彼女の姿。


大きく深呼吸すると、俺は木下に近づいていく。

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