浮気の定理-Answer-
きれいだった。


レンズ越しに見る被写体としての木下は、すごくきれいで……


触れちゃいけないような気がした。


というより、こんなことをしても、木下が俺のものになるわけがないんだと悟る。


体だけ、しかも意識のないままに俺のものにしたところで虚しいだけのような気がした。


……。


金は必要だ。


ここまで労力をかけたんだから、あの男からは金を受け取ったっていいだろう。


でも、木下を汚すことは止めることにした。


裸の彼女を目の前にして、なにもしないっていうのは、正直キツイ。


だけど我慢する代わりに写真くらいはいいじゃないかと思えた。


何枚か撮り終えて、木下の体に布団をかけると、俺はそのままパソコンに向かう。


デジカメを繋いで、パソコンに取り込むと、画像を拡大して楽しんだ。


――これで充分だ


アダルトなサイトを見るよりも、こっちの方がよほど興奮する。


本人には触れないけれど、これから毎日これを見ながら妄想できるのだ。


俺はあの男の口車に乗らなかった自分に酔っていた。


最低なあの男より、俺の方がよほどいいやつだと思うことで、自分のしてることを正当化しようとしてたのかもしれない。
< 63 / 350 >

この作品をシェア

pagetop