浮気の定理-Answer-
水落の場合③
あれから初めて顔を会わせたのは、月曜日の朝だった。
なんとなく他人のような気がしなくて、気軽に声をかけたのを覚えてる。
でも木下が見せたのは、不安と嫌悪感の混じった表情だった。
俺は、わざと言ってみた。
こないだは大丈夫だったかと。
本当に純粋に、心配していたのだ、このときまでは。
それなのに……
木下の口調はひどく冷たい。
俺は、あのとき必死に我慢したっていうのに……
木下を襲えと言うあいつの指示を無視して、写真に納めるだけにとどめたっていうのに……
なのになんで、こんな目で見られなくちゃならないんだ。
蔑むような、怯えたような、それでいてあの日のことを無かったことにしようとしてる、目。
――ふざけんな!
頭に血がのぼった。
こんなことなら、あのとき俺のものにしてしまえば良かった。
やってもやらなくても、こんな目で見られるんなら、いっそ俺のものにしてしまえれば……
「何言ってんだよ
俺たち、そういう仲だろ?」
こいつは知らない。
俺がなにもしなかったって事実を……