浮気の定理-Answer-
一瞬、戸惑ったように見えた彼女の表情はすぐに笑みに変わり、甘えたような声で口を開く。


「いいですねぇ

おじゃましちゃってもよろしいんですか?」


上目遣いにそう言った彼女に、興奮する気持ちを抑えながら、俺はもちろんですと余裕の笑みを浮かべた。


「じゃあ、私……実家暮らしなので、今日は遅くなるって電話してきてもいいですか?」


胸を押し付け、しなだれかかる彼女は、だいぶ酔っているように見える。


家に連れ込んでしまえば、最後までいける可能性は大だ。


「もちろんです、なんなら泊まってくるって連絡してくれてもいいですから」


弛みそうになる顔を、なんとか引き締めて、他意はないんだと見せかける。


思わず泊まるなんて単語を出してしまったことに、警戒されるんじゃないかと思ったからだ。


まあ、家に着いてくるくらいだから、この女だって覚悟はしてるんだろう。


もとはといえば、声をかけてきたのは彼女の方なのだ。


この女も最初からそのつもりだったのかもしれない。


電話に立つ彼女の背中を眺めながら、ゾクリと腰の辺りが疼いたのを感じた。
< 76 / 350 >

この作品をシェア

pagetop