浮気の定理-Answer-
会計を一緒に済ませると、彼女は申し訳なさそうに財布を出そうとしたけれど、俺はそれを断った。


風俗に行けば、もっと高い金を取られる。


このくらいお安い御用だと、余裕の笑みさえ浮かべた。






自宅は、綺麗とは言い難い、古びた二階建てのアパートだった。


ここまできて引かれるんじゃないかと、若干警戒する。


けれど彼女は嫌な顔を見せずに、俺の後ろを着いてきていた。


キョロキョロと物珍しそうに辺りを見回しながら、俺の部屋番号まで口にする始末。


――大丈夫か?この女……


思えばこの時に、怪しんでいれば良かったのだ。


こんなに上手くいくこと自体、おかしいんだと……


けれど、誘惑には勝てず、俺はもうすぐ女が抱けるという喜びでいっぱいだった。


「どうぞどうぞ、こっち、座って?」


後からおずおずと部屋に入ってきた彼女に、隣の座布団を進める。


彼女が靴を脱ぐのに手間取っていた間に、手早く片付けたから大丈夫だろう。


あえて布団は敷きっぱなしにしてみた。


余計な時間は少しでも惜しい。

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