浮気の定理-Answer-
彼女の肩をそっと抱き寄せてみる。


一瞬、体を強張らせたような気がしたけど、逃げることなくされるがままになっていた。


――いける!


そう思い、彼女に顔を近付けた瞬間、何かが腹部に当たった気がした。


そしてそれを確認することも出来ぬまま、俺の記憶はそこで途切れた。










――――…
―――…
――…


……ん……ううん……


なんだ?俺はなんで寝ているんだろう?


さっきまで、あの女を抱く予定だったはずなのに……


もしかしたら全部、夢だったんだろうか?


体を少し動かしてみる。


けれど思うように動かない。


下腹部の違和感と、動いたときに感じた腹部の痛み。


なんだ?チリチリとしたこの痛みは……


ゆっくりと目を開けてみる。


ぼんやりと映る景色は、間違いなく住み慣れた自分の部屋だ。


そこに、黒く動く影が見えた。


目を凝らしてよく見てみる。


ようやく焦点のあった目に飛び込んできたのは、さっきまで抱くつもりでいた、あの女の姿だった。
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