浮気の定理-Answer-
まさか、木下の知り合いだとは思っていなかった。


――あいつ……誰かに話したのか……


チッと舌打ちをしながら、木下が誰にも言えるはずないと、たかをくくっていた自分に腹が立つ。


しかも、こんなか弱そうな女に、騙されて縛られてるなんて……


キッと睨むように、女を見つめると、彼女は冷たい笑みを浮かべながら、言い捨てた。


「ま、桃子を脅してた材料はすべて消させてもらったから、もう脅しにはならないかもしれないけど」


その言葉にハッとした俺は、慌ててパソコンと携帯に目をやった。


――嘘だろ?


消してあったパソコンは、起動されており、この女が何かしたのは一目瞭然だった。


テーブルの上にあったはずの携帯は、見るも無惨に真っ二つにおられ、さっきまで酒が入っていたはずのグラスに惜しげもなく沈められている。


この女の言葉が、はったりではないんだと、俺はガックリと肩を落とした。


「他に隠してるなら、今のうちに正直に教えといた方がいいわよ?」


そう言われて思い出した。

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