浮気の定理-Answer-
「あいつって……誰?誰に頼まれたの!」


女は眉間に皺を寄せて、詰め寄るように聞いてくる。


誰にも言うなと、あの男には念を押されていた。


金も、口止め料みたいなものだ。


だけど、こんな危険な目に合わされるなんて聞いてない。


俺は俺を守るためなら、なんだってする。


この状況を変えるためならなんだって……


「木下の……旦那だよ」


少しだけあの男に対する罪悪感があったのか、声は掠れた小さなものになった。


金を貰ってしまっている分、俺の中に良心の呵責が芽生えたのかもしれない。


だけど目の前の女は、黙り混んだままだ。


俺を見下ろしながら、俺の言葉を信じられないというように睨み付けてくる。


嘘をついてると思ってるのかもしれない。


俺は慌てた。未だ俺の状況が改善されていないとわかったから。


「会社の前で待ち伏せされたんだ……

ほんとなんだ、信じてくれよ!

それで話があるって言われて……

木下を好きなんだろ?って言われたんだ

言う通りにすれば、あいつを好きにしていいって

睡眠薬を渡されて酒に入れて飲ませて、送るふりして好きにしろって……」

< 87 / 350 >

この作品をシェア

pagetop