浮気の定理-Answer-
全て吐き出して、期待に満ちた顔で女を見た。


当然、消してもらえると思っていた画像は、彼女の考えておくという言葉で叶わないのだと知る。


抗議しようと顔をあげた途端、腹部に強い痛みを感じた。


さっきよりは弱いのか、今度は意識は飛ばない。


ただ、体の自由を奪われただけ。


動かない体で、ぼんやりと女を見ていると、後ろ手に縛られた紐が解かれた。


そして彼女は俺の視界から遠ざかって行く。


さっき聞こえた玄関の物音は、さっき女が言っていた仲間なのかもしれない。


放心状態でそんなことを考えながら、口から垂れていく涎を拭うことも出来ず、俺はただ固まっていた。


木下の痕跡を何一つ守ることが出来なかった悔しさと、あんな女に騙された自分への腹立たしさが後から込み上げてくる。


そしてだんだんと戻ってくる体の感覚を確かめながら、気付いた。


自分が最後の最後であの女に哀れまれたことを。


起き上がって、一人では後ろ手に縛られた紐を解くことは出来なかっただろう。


だから抵抗できないようまたスタンガンで体の自由を奪った上で、紐を解いて出ていったのだ。


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