題名のない恋物語
「俺はただ、お前がずっとうだうだ悩んでるから、慣れるために協力してやれるかなと思って言ったんだよ。俺なら昔からお前のこと知ってるからお前も気が楽だろうし、初めてだからって緊張せずに済むだろうなって」
「え」
「別に下心があってとかじゃないから、お前に好きな人ができれば身を引くし絶対に手も出さない」
「……えっと、なんでそこまでしてくれるの?」
純粋な疑問だった。確かに私たちは小学校から一緒という点では他の友人たちとは違う特別なものがあるかもしれない。
でもだからと言って、いつも一緒にいたわけじゃないし、クラスが違えばほとんど話さなかった。特別仲良しな友達というわけではないのだ。
それなのに、どうしてそこまでしてくれるのかわからなかった。そんな義理は涼にはないはずだ。
涼は気恥ずかしそうに目線を下へ向けた。昔から変わらない、長い睫毛が肌に影を落とした。
「…なんか、ほっとけないから」
言われて、ハッとした。そうだ、涼ってこういう奴だった。