題名のない恋物語
いや、言ってどうするんだよそんなこと。また困らせるだけだろ。
「…や、なんでもない」
笑って誤魔化した。
今度っていつだよ。だいたい俺たちは付き合ってない。このデートだってもともと、理紗が彼氏って存在に抵抗をなくすための一つのステップみたいなつもりで提案したんだ。
これで楽しんでもらえばきっと、理紗も恋愛に対して前向きに考えられるって。ただの、おせっかいで。
デートしながら、勝手に彼氏気分楽しんでどうするんだ。俺たちは、ただの友達なのに。
理紗は色んな店の商品を触ったり試したりしながら楽しそうに笑っている。柔く繋がった指は、離れがたそうに絡まっていた。