舞桜
まだ、貴女様が、尚侍様であられた頃に御座います。

アテクシ、そのとき、裳唐衣を新調していたのです。
何故ならば、アテクシはもう、季節に合うものも、新しくて綺麗なものも持っていなかったから。

しかし、どういう訳か、実家で仕立て貰っていたのが、遅れていました。

どうしよう。
間に合わない。
今日は、アテクシがお仕えする、若草の女御様にやっと御目見出来る日だったのに……………

これでは、恥をかくわ。
どうすれば、良い?

途方に暮れ、自分の局の前で沈みこんでいるたのです。

『如何したの。お前、どちらの方の女房?』
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