舞桜
哀愁
ガラガラと、車の車輪が音を立てていた。
「そぅ………あの人、また、行くの。」
私は脇息にもたれて、何となく、近くにあった檜扇を手の中で弄んでいた。
「お方様もお可哀想で………」
女房が言った。
可哀想?
そう思ってくれるのは、お前だけだわね。
このお邸の北の方という、まあ、立派な肩書きを持ってはいるけれど、何なのかしら、これは。
私の住んでいるのは、広いこの邸の、塗籠。
寝殿造は基本的に開放的なつくりになっている。
そのはずだ。
「そぅ………あの人、また、行くの。」
私は脇息にもたれて、何となく、近くにあった檜扇を手の中で弄んでいた。
「お方様もお可哀想で………」
女房が言った。
可哀想?
そう思ってくれるのは、お前だけだわね。
このお邸の北の方という、まあ、立派な肩書きを持ってはいるけれど、何なのかしら、これは。
私の住んでいるのは、広いこの邸の、塗籠。
寝殿造は基本的に開放的なつくりになっている。
そのはずだ。