舞桜
優しい声がしました。
誰だかは、すぐには分かりませんでした。

松の襲の裳唐衣を着られた、若い、身分の高そうな御方で御座います。

そうです。
尚侍様です。

『若草の女御の女房で御座います。』

『若草の?』

そうだったわ。
尚侍様は、若草の女御様がお嫌いなのに。

『………の女房が、何故、此処で泣いているのか。』

『あ…………アテ………わたくし、今日、女御様に初めて御目見するのです。わたくし、あまり身分が高くありませんから………』
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