舞桜
「う"………あ"ぁ………」

何?
これ、何?

苦しい。
苦しいわ。

私は胸をおさえて、得体の知れない苦しさを耐える。

「誰………がある………」

邸に、女房は幾つもいたはずだ。
それなのに、誰も、来ないのね。

「憾むぞ………」


今思えば、私の人生は、禍福あざなえる縄の如し、である。

最も幸せだったのは、私が典侍だった頃かもしれない。
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