アフターバレンタイン
冷蔵庫には例の箱が・・・。

どうか何も言わないで。

パタンと扉を閉める音がした。

ベッドに向かっていた足が止まる。

「なぁ、一つきいていいかな?」

「・・・・・」

「冷蔵庫のあの箱は・・・」

聞かれても言い出せない。

まさか、あなたになんて。

「悪い。余計なこと、きいたな。ほら、風邪の治りが悪くなる。早くベッドに入った方がいいな」

後ろからの声に従って、ベッドに向かい、布団の中に入った。

横になった視線の先にガスレンジに向かう係長の後ろ姿がある。

お湯が沸いたようで、パックのレトルトの袋を鍋に入れている。

何だか不思議な気分だ。

この部屋に係長がいるなんて。

その後ろ姿が好きだ。

ふいにそう思う。

会社ではいつも見ているのに、その背中がいつも以上に頼もしく見える。

「出来たけど、戸棚の茶碗とか勝手に使ってもいいか?」

「はい。どれでも使ってください」

カチャカチャと食器の音がする。

間もなく枕元にお盆にのせたおかゆの入った茶碗とスプーンを持ってきた。

布団から、起き上がってそのお盆を受け取った。
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