アフターバレンタイン
「いただきます」

「熱いから気をつけろよ」

「はい」

食べ始める。

レトルトだが他人が、ましてや好きな人が用意してくれたものだからか美味しく感じる。

ゆっくりとだが、味わって茶碗一杯のおかゆを食べ終えた。

「ごちそうさまでした」

「律儀だな」

クスッとした笑いとともに呟きが聞こえた。

「薬を飲む水を持ってきてやる」

お盆を持ちながら、係長はキッチンへと向かう。

律儀なのは係長もだ。

「ほら、水だ」

持ってきてもらった水で薬を飲む。

「今日はありがとうございました」

「礼などいいぞ。それより今晩はゆっくり休んで、明日は来れそうなら出社しろよ」

再びキッチンに向かう係長に声をかける。

「後片付けなんていいです」

「いいや、ちゃんとやっていくさ。あと玄関のカギを借りていいか?閉めたら、ポストに入れておく」

「はい」

ベットから出て、会社に持って行っているカバンからカギを出す。

キーホルダーには根付の犬がついている。

いつかの出張のお土産だといって係長から貰ったものだった。
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