アフターバレンタイン
「これ、カギです」

後片付けを終え、帰り支度をしている係長に手渡した。

「ありがとう。ゆっくり休めよ」

「こちらこそ、ありがとうございました」

「あ、そうだ。チョコレートは当日でなくても大丈夫だぞ」

「へ?」

見上げると大好きな笑顔がこちらを見ていた。

「とは、いってもできれば早い方がいいがな?」

熱がまた上がりそう。

「特に、本命チョコは」

両手で顔を抑える。

「き、気づいてたんですか」

「ああ、あれだけじっと見られれば、いやでも気づく。今日は待ちきれなくてきてしまった。無理せず休んで、ちゃんと手渡しで渡せ。待っているから。じゃあ、おやすみ」

玄関の扉が閉まり、カギのかかる音がして。

間もなくポストにカギの入る音が響いた。

よし、熱だけでも下げて、明日は会社に行こう。

そして、係長に本命チョコを渡すのだ。

『あなたが好きです』

一緒に言葉を添えて。

Fin
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