白の終わりに願うもの
「クリスマスの夜だっていうのに、恋人と過ごさなくていいの?」
「……何よ、嫌味?」
「可哀想に、まだ彼氏できないのか……」
「別にほしくないし。いらないし」
「よしよし、強がらなくてもいいんだよ」
「……自分だってトナカイしか友達いないくせに」
「それは言わない約束だろ!」
腹が立つのに、こんなにも穏やかな気持ちでいられるのは、きっと聖なる夜だから。じりじりと這い寄ってくる朝の尻尾を、今は忘れていたいから。
「サンタでしょ、たまにはプレゼントくらい置いていきなさいよ」
「催促するのかよ。ほしいものでもあるの?」
ずっとほしかったニットのカーディガンは、さっきパパが枕元に置いてくれた。朝になったらそれを着て、雪の積もった真っ白な街を、きらきらと輝く太陽を眺めながら、一人で歩くの。
だけど、もしも叶うなら。
「……別にないけど」
「ないのかよ」
「あるけどないの、絶対無理だもの」
「なんだよそれ、サンタなめんなよ」
なんでもあげるよ、言ってごらんと、私の髪を撫でながら、サンタクロースがまた微笑う。朝になったら、あなたの去ったこの部屋を出て、きらきらと輝く太陽を眺めながら、私はまた一人きり、真っ白な街を歩くの。
終わったばかりの聖夜が恋しくて、どうにも苦しい気持ちを振り払いながら、一人で、白い街を。
「じゃあ、子守唄。眠れないから、子守唄うたってよ」
「お安い御用さ」
「音痴だったら追い出すからね」
「本当に可愛くないな!」
だからせめて眠りにつくまで、朝がやって来るまでは。窓の向こうの粉雪が、せめて夢の中にまで、あなたを連れて来るように。
【白の終わりに願うもの】
(あなたがほしいと言ったなら、きっとあなたは優しく笑って、私の頬に触れるのでしょう。そしてきっともう二度と、私に聖夜の夢を見せない)