どれほど好きかと言われても
苛立ちを露わにする先輩。

まあ、怒るだろうなと思う。それは当然だろうとも思う。

ただ、ここまで感情的になることのできない俺は、先輩が感情を表すのを見て尊敬さえしてしまう。

こんな風に感情を表に出せたらどんなに楽だろう。

…なんて、先輩に言ったら、「怒らせてるくせに何を言っているんだ」と更に怒られそうだけど。


「もういい、今日は帰るから!」


そう言い放つと先輩は荷物をまとめて教室を出て行く。


ばたん、とドアは乱暴に閉まった。


そのドアを見て俺は思った。

…たぶん、先輩はまた怒った。

「なんで引き留めてくれないの!」って、たぶんまた後から怒られるだろうな。


…後でまたぐちぐち言われるのが分かってるなら、最初っからそうすればいいのに。


「ほんとは覚えてる」って一言言えば、それで簡単に解決してしまうことなのに。


分かってるのに、それでもできない俺はただの意気地なし。

ほんと、こんな自分にいちばん自分が呆れる。


俺は何度目かの溜息を吐いて空き教室を出た。



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