どれほど好きかと言われても
そういう無邪気なところにみんな惹かれてるんだよって、ほんとなんで分かんないかな。


「川島、あの、さっきはごめん」


先輩は急にもじもじし出した。


「別に」


「でっ、でもね、だってその、覚えて…」


「覚えてないわけないでしょ」


俺は先輩の言葉に重ねるようにして言った。


「俺はあんたの彼氏だよ。彼女の誕生日を忘れるはずがない」


先輩は目を見開いた。


「だ、だって、昨日『さあ』って言って…」

「っ、それは、照れただけ。覚えてないなんて、一言も言ってないでしょ」


照れ隠しするように早口で言えば先輩は更に目を見開いた。

それから先輩は笑い始めた。にやにやしてる。

むかつく。


「何笑ってんですか」

「べっつに~?」


この嘘つきが。


「プレゼント渡そうと思ったんですが、やっぱやめときます」


俺がその場を立ち去ろうとすれば先輩は「ごめんって、川島ぁ!」と縋り付いてくる。

ほんと小型犬みたいな人。尻尾が見えてきそうだ。

< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop