優しい雨 ~一年後の再会~
「『遺産なんかいらないし、柚莉花も渡さない!って言ったやったわ!!』って笑いながら」
 祖母は後継ぎが欲しかったらしい。
 ひとり身で子供を育てるのは大変だろうと手放すよう仕向けようとしたが、母はそれだけはしなかった。
「良かったな」
「うん」
 素直に笑顔で頷いた。
 必要ないのかもと不安を抱いていたのはあの日までだった。
「〝変わらない永遠なんて必要ないよ〟」
 智博が口にしたそれはシナリオに書かれたセリフ。
 病気の女の子が不思議な青年から不老不死の命の力を受け取ろうとする。
 命の誘惑に負けそうな彼女にずっと側にいた少年が伝える言葉。
 同じ時の中で生きていこう、と。
 壊れてしまった幸せな日々がもう一度、続くことを願っていたあの時の自分自身と、新たな幸せを手に入れることもできるんだと教えてくれた彼。
 それを元にして創った話だった。
 動かなきゃ手に入らない。
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