俺の彼女がドルヲタだなんて知らなかったんです!?
人混みに流され、美和に手を引かれ、気づいた時には武道館の前にいた。
...ん?
なぜ、武道館?
ポカーンとする俺の横で可愛くピョンピョン跳ねている美和。
「あー、良かった!間に合った!」
「み、美和...?」
「あ、ごめんね柊真くん!!
実は今日、【WARASHI】のライブなの!!」
「WARASHI...?」
って、あの有名な国民的アイドル?
男5人グループの?
「友達が武道館ライブのペアチケが当たったらしくて。でも行けなくなったからって、私がもらったの」
「は、はぁ...」
「で、せっかくだし今日のデートで行こうかなって!」
「あぁ...。なるほどな」
そういうことか。
確かにCMでやってた気がする。
この人混みはライブのせいだったんだな。
そのために俺たちもここへ来たと。
...つまりサプライズでは無かったわけか。
一人で期待して恥ずかしいな...。
ライブ自体は全然嫌じゃないけどさ。
「何時から始まんの?」
「えーっと...10時からって書いてる」
「げっ、あと20分しかねーじゃん!
早く行って入口に並ばないと」
「ちょっと待って!!」
歩き出そうとした俺の服の裾を、伸びるくらい掴む美和。
肩にかけていたボストンバッグを地面に下ろした。
それを開けて中を探り始める。
「な、何してんの?」
「戦いの準備」
「...はい?」
「すぐ終わるから、待っててね!」