ご飯は皆が揃ったら。
というわけで実家に戻って二週間。
幸いにもうちはクリーニング屋だから、次の仕事を探しながら片手間で手伝える。
もちろんお給料なんて出ないけど、家賃もなく食事も作ってもらえて光熱費の心配もない中で職を探せる分気は楽だ。
けれど、ハローワークで候補を探し、今の自分の能力を生かせる場所を選ぼうとして手は止まる。
やりがいを見出したってまた押し潰されたらどうしよう。
思いのほか弱ってるあたし。
もう定時に上がれて有休もちゃんともらえるとこなら高望みしなくていいんじゃないだろうか。
車のローンさえ地道に払っていけばいいんだし。
今までのように休日返上やサービス残業しなくても・・・
「塔子!」
ぼさっとしてたあたしの頭を掠めて行く手のひらに、振り返れば呆れた顔のお母さんが立っていた。
「目の前まで来なくちゃ返事もしないの、アンタは」
「ごめん・・・何?」
目を通していたリストを机に置き、椅子ごとお母さんに向き直る。
いつも階段の下から呼び始めるから、ここまで来るなんて相当無視してたに違いない。
アイロンがけ中だったら確実に焦げてるな。
あたしが謝るとお母さんはコロッと表情を変え「塔子に珍しいお客様来てるわよ」と後ろを向いた。
珍しい?
その言葉にはて、と首を傾げる。
ここに戻ってきた翌日、地元の友人を集めて愚痴大会という名の酒盛りは済んでる。
会社で仲良かった女子や後輩はこの家を知らないからまず来ないだろうし、今更あたしを陥れた奴らが謝罪に・・・それこそあり得ないな。