ヴェロニカは女王一年生!
 そうなれば、もともとヴェロニカが丹精込めて鍛錬して育て上げた軍団・ヴェロニカ軍は無敵だ。
 行儀よく行進し、戦場に着くや否やあっというまにリッサンカルア兵を蹴散らして、敵が拠点としている城をおさえてしまった。
「さあ、敵は蹴散らしたわ。ヘンリー一世にご連絡を!」
 知らせを聞いて文字通り駆け付けたヘンリー一世は、馬から転げ落ちるようにしてヴェロニカとマイクの前に飛んできた。
 久しぶりの対面に、三人とも自然と頬が緩む。
「ヴェロニカさま、援軍感謝いたします」
「ささ、ヘンリー一世陛下! 邪魔者は蹴散らしました。お城に御国の旗を掲げて下さい」
 ヴェロニカとマイクが見守る前で、ヘンリー一世は真新しい国旗を城に掲げた。
 晴れた空に、真新しい旗が翻る。
「やった……領地をひとつ……奪い返しました」
「よくやったな、ハリー……じゃなくて、ヘンリー一世」
「マイク、いいじゃない今は」
 ええ、と、マイクが少し困ったような顔になる。
「この場にはわたしたち三人しかいないんだし。ハリーって呼んであげて。ハリーもお兄さんって呼びたいでしょう?」
 お、おう、と、マイクが照れる。その顔を見てヴェロニカは満足そうだ。
「残党がいたら困るから、わたし、見回り行ってくるわね」
「おう。ヴェロニカ、戦場だけどやりすぎ注意。武器より対話が先だぞ」
「はーい。兄弟水入らずでごゆっくり」

 それから数日後。
 まだこの地に、もうしばらく留まりたいと駄々をこねる王女を荷馬車に無理やり押し込んだヴェロニカ軍は、五千の兵をその場に残して慌ただしく帰国した。

 なにせ、国には用事が山盛りだ。多少のことは、ヴェロニカによく似た顔だちの超有能な侍女・ジャスミンが身代わりをつとめてくれるが、それでも限界がある。
「えーん、ハリー陛下、また遊びましょうねぇ……」
 それの一つが――先の内乱の後始末でもある『白い亡霊』の治療だ。
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