ヴェロニカは女王一年生!
「ということは……建物と、みんなにまとめて教える先生が必要よね?」
「その通りだよ。偏ることのない思考を持った人物が師にふさわしい」
 偏ることのない思考、というのが今一つわからないが、ヴェロニカはいろいろな人の顔を思い浮かべた。
「……というか、何人雇えばいいのかしら?」
 そうだな、と、ノア王子は指を折り始める。
「読み書きの先生、算術の先生、国の歴史を教える先生、体操を教える先生、芸術を教える先生、生活の知恵を教える先生。ウチでは、小さな学校でもこれだけはそろっているんだよ。必修という」
「え! そんなに?」
「ああ」
 この国にも小さくていいから学校が必要だ、とノア王子は言い切った。
「うーん……」
「取り急ぎ、読み書きは俺が、芸術はヒーリアが担当する。体操は、グーレース長官が良いと思うのだが……忙しいだろうか。算術と歴史、生活の知恵は、民から広く公募すれば良い。思わぬ人材が隠れていることもある。……ふむ? これは良い男、良い女が選べるいい機会だな、うわっはっは!」
 ノア王子は、悪い人物ではない。
 ないのだが――真面目な時と、外道・変態丸出しの時のギャップが大きすぎる。ヴェロニカは、軽くめまいを覚えてため息をついた。

 だが『学校』という制度は興味深い。
「王子、さっそく父さまのところへ話を持っていきます。上皇宮まで一緒に来てください」
「え、ええ!? もう動くのかい?」
「もちろんです!」
「せっかちな王女だなぁ……。王族たる者、こう、もっとゆったり……」
「善は急げ! 午後の巡回までに戻ってこなくちゃ! さ、いくわよーっ!」
 トタタタターッと走り出すサーモンピンクの疾風を、王子は慌てて追いかけた。
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