Am I What Colors?ー元姫の復讐ー〈リメイク版〉
そこにはいつも通り蓮央がいて。
いつも通りテレビを見ているわけだけど、どこか焦点があっていない気がした。
ニュース...見てるよね。
今のうちに顔洗って着替えして、さっさと外に出ちゃお。
泣き腫らした目を見られないよう、顔を背けながら洗面所へ向かおうとした私の背中に、蓮央の声が飛んできた。
「...さっきのは、忘れて」
私の足が止まる。
手足は冷えて、心臓だけが脈打っている。
...忘れて?
なに、それ。
何言ってんの、この男...。
彼の言葉が信じられなかった。
人に散々心配かけた挙句、無理やりキスしておきながら、『忘れて』?
どういうつもりなの?
意味、分かんないよ...。
ジワリと涙が滲んだ。
もう、泣きたくないのに。
傷つきたくなんてなかったのに。
結局は...こうなる。
「...アンタ、最低だよ」
「......」
「私は、アンタのオモチャじゃない」
「...ごめん」
彼は『ごめん』しか言わない。
そこには否定も肯定もない。
だから余計に悲しくて。
私という人間が彼の中で一体何だったのかという疑問は、晴れなくて。
涙がこぼれないように唇を噛みしめて、私は洗面所に逃げ込んだ。