すっぴん恋愛【バレンタインデー】
『義理』と言われなくても分かってはいるが、自分にも用意してくれたのが嬉しくて、速水は満面な笑顔で「ありがとう」と言う。

雪菜はバッグから丸い形のチョコクッキーが二枚入った袋出して、速水に向ける。

速水のために……みたいに言ってはいるが、適当に配ろうと作ってきたものだった。


「はい、どうぞ。えっ? あれ? 竜哉……」

「えっ? あ、こら! 笹木!」


いつの間にか竜哉が近くに来ていて、速水に向けた袋を素早く取り上げていた。

不機嫌な顔で速水を睨む。


「人の女からもらおうなんてしないでくださいね」

「なんだよ、雪菜ちゃんがくれるというのに邪魔するな」

「雪菜も俺以外にあげるなよ」

「うん……ごめんなさい」


雪菜は竜哉を真っ直ぐ見て、素直に謝った。


「あの、笹木さん。これもらってください。もちろん義理なので」


竜哉に一人の女性が声をかける。
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