love*colors
「──返事は? なぁ、日南子」
日南子が涙に滲む視界のまま巽の首に両腕を絡めると、巽がそれに応えるように日南子の身体を抱きしめた。
「嬉しい……」
「──よかった。もし断られたらコレの行き場がないとこだった」
そう言った巽が、パジャマ代わりにしている短パンのポケットから手のひらにすっぽりと収まる小箱を取り出して日南子の手のひらにそっとのせた。
「……」
それは誰が見てもわかる、宝飾品専用の小箱。ドラマや漫画でよくみるアレ。
「ジャジャーン! ……なんつってな?」
巽がわざわざ効果音を付け照れくささに唇を噛みながらその小箱を開けると、中には小さいながらも存在感たっぷりの光輝く指輪。
「クソ恥ずかしいけど。一生に一度はやっとかねぇとと思って」
そう言って巽が箱から指輪を外して大事そうに指でつまむ。
「手、出して。今度こそ合法的な印だかんな。“俺のだ”っつう!」
「……うん」
世界で一番好きな人からの所有印。もう、ずっとまえからあなただけのものだよ、と言おうとした言葉が胸一杯で言葉にならない。
「好きだよ」
そう言った巽が日南子の左手の指に指輪をあてがう。
「私も、大好き。世界で一番……」
この言葉に嘘はナイ。世の中にどれだけの人間がいて、この先どれだけの出逢いがあろうとも、そこだけは自信がある。日南子の心を温めるのもときめかせるのも、きっとこの世で彼一人。
「ははっ、世界か。また壮大に来たなー」
巽が笑った瞬間、宛がわれた指輪がすっと日南子の指におさまった。
「……ふふ」
日南子は、その指輪がはめられた手を何度も返しては眺め返しては眺めてみる。
「──ほんとに、夢……じゃないよね?」
「まだ言うのかよ」
「だって」
「それ以上言うと、その口塞ぐぞ」
少し呆れたように、それでいて意地悪な笑顔を向けた巽に日南子の胸は性懲りもなくキュンとする。
「いいよ。塞いで」
「……大胆な事言うようになったな」
笑った巽の唇が日南子の唇にそっと重なる。
触れるだけの優しいキスが、額に、瞼に、頬に、唇に降る。
時々チクチクと掠める巽の髭の感触が、くすぐったくて心地いい。巽が唇を離した隙に、そっと指を伸ばしてそこに触れた。指先からのザラザラとした感触を楽しむように指を動かすと、彼の目元が優しく緩む。
「だから、触り過ぎ」
「だって気持ちいいんだもん」
「……なんか複雑な気持ちんなるな」
「ふふ」
なぜだろう。こんなにも彼に触れたくなるのは。他の誰にも起こらない、彼にだけの衝動。
少し複雑そうな笑みを浮かべる巽に今度は日南子から唇を寄せた。
寄せた唇は、すぐさま彼に捕えられ逃げ場を失う。
追い詰められて激しく求められる。この瞬間の全身がしびれるような感覚が好きだ。
「……大好き」
何度この言葉を口にしただろう。きっと何度伝えても伝え足りない。溢れる気持ちが大きすぎて。
「俺は愛しい──、かな」
幸せだ。──これ以上ないくらい。
一日の終わりに私に触れる唇は、あなたの温かな唇がいい。
朝目覚めて一番最初に見る顔は、あなたの優しい笑顔がいい。
一日の初めに口にするのは、二人のどちらかが作った料理がいい。
楽しいことも、悲しい事も二人仲良く分け合いたい。
そうして積み重ねていく毎日のささやかな幸せを大切にしたい。
愛で日常が鮮やかに色づいていく。愛に色があるとしたら、私たちのそれは何色だろう?
一生かけて二人で染め上げて行けたらいい。
あなたと私の、── Love *Colors ──
-end-
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最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました(*^-^*)
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◆他サイトにて、灰原&赤松のスピンオフ作品も完結済み。
但し、そちらはBL作品となりますので、閲覧にはご注意くださいませ。