これは倫子ちゃんと龍之助くんのはなし2
先ほど下駄箱に入れ直したチョコを杉山は手にして眺めていた。

「龍ちゃん要る?」

「・・・てめぇが貰ったもん人にやんなよ」

「せやけどなぁ。宛名もあらへんし、下駄箱ちゅうんが衛生的にどうなん?」


「包装されてんだから大丈夫だろ。そいつの気持ちも考えてやれよ。つーか貰えるだけいいじゃねぇか!」


「龍ちゃんは優しいなぁ・・・」


そういう杉山の声は優しい。
龍之介が女だったら惚れてただろう人好きのする顔で頬笑んでいた。


「・・・優しいんにオレの方がモテるなぁ」


「うるせぇよ!」


杉山はすでにここに来るまで貰ったであろうチョコが3箱、カバンから覗いていた。
ちょうど龍之介の視界の高さにあって余計腹正しい。

「ええやん、龍ちゃんは愛しい彼女からチョコ貰えるんやし」

「・・・・・・・・・」

「なんや別れたん?」


「・・・縁起でもねぇこというな」

「冗談やんか。なんや喧嘩したん?」


「・・・大したことじゃねぇよ」

「あんなぁ・・・強がるんは勝手やけど、高校最後のバレンタインくらい素直になったらええんとちゃうん?」

「・・・分かってるよ」

「後悔せぇへんようになぁ」

言われなくても分かってる。そしてすでに後悔している。
ひとつ年下の倫子とは教室の階が違うため、会おうとしなければ会えない。

龍之介は放課後までにはケリをつけようと鞄に入れてあるものを触って確認した。
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