君にあずけたもの
私はゆっくりと深呼吸をして、要に言った。「あたし…やっぱり知りたいな…」

『俺が知ってることは俺のリストに載っている客だけだ。そして、俺の客はお前の彼氏の兄貴』
「え…そうだったの」

『あいつの兄貴はリスト上では…寿命だ』
「はじめから、決められてた命ってこと?」『あぁ、、けど…兄貴自身はそうは思ってないんだよ』
「どういうこと?」
『兄貴は、悔いバリバリであっちに逝ったんだよ…やり残した事がありすぎてなぁ…』

いったい、なんだろう?胸騒ぎがしてる…


『兄貴は陸に殺されたと思い込んでる。実際に手をくだしたわけじゃなく、陸に精神的にやられたせいで自分が死んだと思い込んでるんだよ』

「なんで」

『こっちの世界では…事故扱いされてるがな実際は脳梗塞で倒れてこの世が終わる事がリストには書いてあるんだよ』

「お兄さんは事故だったの」

『脳梗塞で倒れたとこに車がきてひかれたんだよ』

「やっぱり事故…」
『いや!こっち理由で車にひかれてはいるが、実際は車にひかれなくても誰にも倒れた時に発見されずにこの世を去ることになっている』

「り、理由って?」

『あぁ、この時期客が多くてな…別々に迎えるはずだったんだが、こっちの人数が追い付かなくて二人いっぺんに迎えるようになっちゃったんだよ』

「ってことは、運転手も?」

『運転手も脳梗塞で倒れて運転不能になって事故になることになっている。ただ、兄貴以外に突っ込むことになってるんだよ…本当はな』

「じゃぁ、ひかれる予定だった人は」
『ピンピンしてるよ、そいつは生きる使命になってる奴だからな…』
人の人生を、左右する問題を井とも簡単に変更させられるなんて………あまりにも酷すぎる。

『そのおかげで一人苦労するはずの人間が助かったんだ。事故で足を失うはずだったその女性はお前の先生だ』
「え……?」

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