詩集  どんな恋ならしてみたい?
【梅と雀と女の子】

今は昔の中国で、とある易者の先生が家人集めて仰った。

「庭の梅の木見ていたら、枝にとまったスズメ二羽、
 争いはじめてもつれ合い、一緒に地面に落ちよった。

 これを占機に卦を立ててみると、本日昼下がり、
 幼い少女がやってきて小枝を折ろうとするはずだ。

 その際、何かに驚いて怪我してしまう事になる。
 大事に至る事は無い。とはいえ出来れば傷つけず

 済むなら済ませてやりたいと、私も思った次第でね。
 皆には面倒をかけるが、娘が来ても気に留めず

 気の済む様にさせてくれ。驚かしてはいけないよ。
 梅の小枝の一本で済むなら安い物じゃないか」

「かしこまりました」 家人一同頷いた。

果たしてその日の昼下がり、やってきたのが女の子。
きれいな花を身に纏う梅の小枝に注目し、

思わず近寄り手を伸ばす。
「きれいな梅でしょう」 一人の家人が声をかけ、
「きゃっ!!」
少女は驚き転びかけ、梅の木に触れ怪我をした。

この家人。遣いに出ていて先生の話を聞いていなかった。
少女の怪我は大事には至る事なく済んだとか。

これぞ巷で有名な梅花心易(ばいかしんえき)の逸話。
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